樹種同定(非破壊法) (1)プレパラート作成 木質考古遺物にはその重要性から、切片作成にあたりできるだけ損傷を少なくする必要の あるものが少なくない。このためミクロトームによる切片作成(特に前処理としての試料 整形)は避け、剃刀による手作業を行う。 従来行われていた、試料整形→ミクロトームによる切片作成→染色・・・・という「破壊 を前提としたプレパラート作成法」に対し、切片作成作業を全て剃刀によりる手作業で行 い、できるだけ遺物に損傷を与えないようにする方法を、便宜上「非破壊法」と呼ぶこと にする。 光学顕微鏡下での観察を行うため、木材の横断面(木口面)、放射断面(まさ目面)、接 線断面(板目面)の3断面から剃刀を使用して切片を切り出し、永久プレパラートとして 封入する。永久プレパラートを作製する手順を下記のフローチャートに示す。 (2)顕微鏡による観察および記載 上記の手順で作製したプレパラートを、光学顕微鏡下で4倍〜600倍の倍率で観察、記載す る。記載に当たっては3断面の顕微鏡写真を付け、用語などは基本的には島地ほか(198 5)に従う。 (3)樹種の同定 樹種の同定に当たっては、現生標本および資料との顕微鏡下での比較を基本とする。 −・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・ 〔処理手順〕 〔処理内容〕 切片(薄片) 作成剃刀を利用(損傷を最小限にする)  ↓ 染色 サフラニンによる  ↓ 有機溶媒への置換 試料中の水分を有機溶媒に置換  ↓ 標本作製 カナダバルサムにてプレパラートに封入 −・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・ 樹種鑑定用プレパラート作製フローチャート(非破壊法)